コピーライティングとは 外に任せる前に決めること

コピーライティングとは読み手に行動を促すために書く技術です。用途によって変わる頼む相手、外に任せられる部分と任せにくい部分、発注前に決める4つのこと、納品された原稿を判断する順序と費用の考え方を整理します。

コピーライティングとは、読み手に特定の行動を取ってもらうことを目的として文章を書く技術です。 広告、販売ページ、メール、提案資料。媒体は違っても、目的は共通しています。読んだ人が、次の一歩を踏み出すことです。

文章を美しく整えることや、印象に残る言い回しを作ることとは、目的が異なります。評価されるのは表現の巧拙ではなく、読んだ人が動いたかどうかです。

この記事では、用語の意味から始めて、外部のライターに発注するときに自社で決めておくべきことまでを整理します。自社で書くための技術論ではなく、任せる側の判断を扱います。

コピーライティングが担っている役割

マーケティングの工程のなかで、この技術が使われる場所は限られています。

集客の段階では広告の文面、教育の段階ではメールや動画の台本、販売の段階では販売ページや提案資料。いずれも、人が何かを判断する場面に置かれています。

裏を返せば、判断する場面がない工程では、この技術は関係しません。在庫管理や請求業務の文章に、行動を促す設計は必要ないためです。

どの工程のどの場面で人が判断しているのかを把握していないと、どこに手を入れるべきかも決まりません。 工程全体の考え方はDRMとは何かで扱っています。

「文章を変えれば売れる」という見方について

コピーライティングは、しばしば「言葉ひとつで売上が変わる技術」として語られます。

ページの文面を変えて成約率が動くこと自体は事実です。 見出しの一行、ボタンの文言、価格の見せ方。これらを変えて数字が動く場面は、実務でも珍しくありません。

ただし、それが起きるのは、その手前までの工程が機能している場合に限られます。

商品を知らない人が販売ページに来た場合、そのページの文面をどれだけ整えても、購入には至りません。必要性を感じていない、比較していない、予算を持っていない。判断に必要な材料が揃っていない人には、文章の巧拙が届く余地がないためです。

私たちは、文章は工程の中に置いて初めて効くものだと考えています。販売ページの文面を改善する前に、そのページに誰がどういう状態で来ているのかを確認するほうが、結果につながる場合が多くあります。

これは、コピーライティングの価値を否定するものではありません。効く条件がはっきりしている技術だ、という意味です。

求める成果によって、頼む相手が変わる

「コピーライティング」と一口に言っても、求められる能力は用途によって違います。 ここを揃えずに発注すると、力量のある書き手でも合わない結果になります。

用途求められること
広告の文面短い文字数で判断させる。媒体ごとの規定に通す
販売ページ長い文章で検討を最後まで運ぶ。構成の設計力
メール・配信何回かに分けて順番に渡す。全体の設計と継続
提案資料対面での説明を前提に、口頭を補う

販売ページが書ける人が、広告の短文も得意とは限りません。 逆もまた同様です。用途を明示せずに「文章を書ける人」を探すと、得意分野が合わないまま進むことになります。

発注の前に、どの用途で、どの媒体に載せるものかを1行で書けるかを確認してください。

外部に任せやすい部分と、任せにくい部分

発注を検討する場合、何を渡せるかを整理しておくと判断が早くなります。

部分外に任せられるか理由
誰に向けて書くか任せにくい顧客を知っている側でなければ決められない
何を伝えるか任せにくい商品の実態と、約束できる範囲を把握している必要がある
どの順番で伝えるか相談しながら決める型はあるが、商品によって変わる
どう書くか任せやすい技術として切り出せる
検証と改善体制による数字を見る人と書く人が離れていると回らない

上の2つが決まっていない状態で発注すると、方向の定まらない原稿が納品されます。 これは受注側の力量の問題ではなく、決めるべき情報が渡されていないことによるものです。

発注前に決めておく4つのこと

外部に依頼する前に、次の4点を自社の言葉で書き出しておくと、納品物の精度が変わります。

1. 読み手はどういう状態にあるか。 すでに商品を知っているのか、課題は自覚しているのか、他社と比較しているのか。同じ商品でも、読み手の状態が違えば書くべき内容は変わります。

2. 読んだあと、何をしてほしいか。 資料を請求してほしいのか、問い合わせてほしいのか、その場で購入してほしいのか。行き先を複数置くと、どれも選ばれません。 1つに絞ります。

3. 約束できる範囲はどこまでか。 提供できる成果と、条件付きでしか言えないこと、言ってはいけないこと。ここを渡さないと、受注側は安全側に寄せた当たり障りのない文章を書くか、逆に踏み込みすぎた表現を書くことになります。

4. 何をもって良し悪しを判断するか。 成約率か、問い合わせ件数か、読了率か。判断基準を先に共有していないと、修正の依頼が「なんとなく違う」という形になり、往復が増えます。

この4点は、外注しない場合でも必要です。社内で書く場合も、書き手が別の人であれば同じ情報が要ります。

発注の進め方で決めておくこと

4点を書き出したうえで、発注の形についても先に決めておくと、往復が減ります。

修正の回数と範囲を決める

「修正は何回まで」だけを決めても、何を修正と呼ぶかが揃っていないと揉めます。

表現の調整と、構成そのものの作り直しは、かかる労力が違います。前者は修正、後者は再発注として扱うと決めておくと、双方が判断しやすくなります。

判断する人を1人にする

社内で複数人が原稿に意見を出すと、方向が定まらないまま往復が増えます。

意見を集めること自体は構いませんが、最終的に何を採るかを決める人を1人に絞ることが必要です。ここが曖昧な案件は、回数を重ねても原稿が良くなりません。

数字を共有するかどうかを決める

改善まで依頼する場合、成約率や離脱の数字を書き手に共有するかどうかを決めます。

共有しない場合、書き手は手応えのないまま書き続けることになり、改善が推測に基づくものになります。共有する場合は、取り扱いの範囲を契約で決めておきます。

権利の扱いを決める

納品された原稿を、他の媒体に転用してよいか。著作権の扱いを発注時に決めておかないと、後から使えないことが分かります。

販売ページ用に書いた文章を広告に流用する、といった使い回しを想定しているなら、その旨を先に伝えます。

参考モデルケース:原稿ではなく前提を作り直した例

守秘義務に配慮し、業種および一部の詳細を変更した参考モデルケースとして記載しています。

BtoB向けのサービスを提供している事業者から、「販売ページのライティングを依頼したが、成果が変わらなかった」というご相談を受けたことがあります。

納品された原稿を拝見すると、文章としては整っていました。構成も定石を踏まえたものでした。

伺っていくと、発注時に渡されていた情報が「商品の機能一覧」だけでした。誰に向けたページなのか、読み手がどこまで理解している前提なのかが共有されていなかったのです。結果として、原稿は「初めてこのサービスを知る人」に向けた内容になっていました。

一方、そのページに実際に来ていたのは、すでに他社サービスを使っていて乗り換えを検討している層が中心でした。その人たちが知りたいのは、サービスの概要ではなく「いま使っているものと何が違うのか」です。

このとき提案したのは、原稿を書き直すことではなく、先に読み手の状態を確認し、その内容を発注条件に加えたうえで、比較の観点を1節足すことでした。全体の8割はそのまま使っています。

結果として、同じライターによる修正で問い合わせが改善しました。書き手の力量ではなく、渡した前提が不足していたということです。

なお、これは常に発注側に原因があるという意味ではありません。この例が示しているのは、原稿の質を判断する前に、渡した情報が足りていたかを確認する価値があるということです。

納品された原稿を、どう判断するか

原稿を受け取ったとき、好みで判断すると往復が止まらなくなります。 次の順で見ると、判断がぶれにくくなります。

1. 事実が正しいか。 商品の内容、価格、条件。ここに誤りがあれば、表現以前の問題です。最初に確認します。

2. 約束が範囲を超えていないか。 言い切ってはいけないことを断定していないか。法令に触れる表現が混じっていないか。ここは修正ではなく、差し戻しの対象です。

3. 想定した読み手に向いているか。 発注時に伝えた読み手の状態と、原稿の前提が合っているか。ここがずれていると、表現をいくら直しても成果は変わりません。

4. 行き先が1つに絞れているか。 読んだあとに取る行動が複数書かれていないか。

5. 表現の好み。 ここまで通ったうえで、初めて言い回しの調整に入ります。

順序が逆になると、表現を直したあとに前提のずれが見つかり、作業がやり直しになります。上から順に見て、上で止まったら下は見ないという運用が効率的です。

社内に残すか、外に出すかの判断

最後に、体制の面から整理します。

社内に残すべきは、判断の部分です。 誰に向けるか、何を約束するか、何をもって良しとするか。ここを外に出すと、事業の方向そのものを委ねることになります。

外に出しやすいのは、書く作業と検証の実務です。 ただし検証まで任せる場合は、数字を見る人と書く人が同じ側にいる必要があります。書き手に数字が共有されない体制では、改善が回りません。

判断の目安は、上の4点を社内で書き出せるかどうかです。書き出せない状態で外注を検討している場合、まず自社の導線と読み手の状態を整理するところから始めたほうが、結果的に費用は抑えられます。この段階の整理はマーケ構造診断でお手伝いしています。

費用の考え方

金額の相場は、依頼先の形態と用途で大きく変わるため、ここでは判断の枠組みだけを整理します。

比べるべきは単価ではなく、判断に要した時間を含めた総額です。 安く発注しても、前提が渡っていないために往復が5回発生すれば、社内の確認工数が費用を上回ります。

もう1つは、その原稿が何回使えるかです。 一度きりのキャンペーン用と、数年使う販売ページでは、同じ金額でも意味が違います。長く使うものほど、前提を固めてから発注する価値が上がります。

改善まで含めるかどうかでも変わります。 書いて納品して終わりなら費用は抑えられますが、成果が出なかったときに原因が分かりません。数字を見て直すところまで含めると費用は上がりますが、何が効いたかが社内に残ります。

判断の目安は、その原稿で動かしたい金額の規模です。年間で数百万円の売上に関わるページと、単発の案内では、かけるべき費用も体制も変わります。

表現には守るべき範囲がある

発注する側が把握しておくべき点として、成果や効果を示す表現には法令上の制限があります。

景品表示法は、実際のものより著しく優良だと誤認させる表示を禁じています。根拠を示せない成果の表示、平均的でない結果を一般的なものとして示す体験談の使い方などが、これに当たります(参照:消費者庁「表示規制」)。

実務上の要点は、この責任が書き手ではなく発注者側にあることです。外部のライターに任せた文章であっても、表示の責任を負うのは商品を販売する事業者です。

そのため、発注時に次の2つを渡す必要があります。

言ってよいことと、言えないこと。 提供できる成果、条件付きでしか言えないこと、根拠がなく書けないこと。この線を渡さないと、受注側は当たり障りのない文章を書くか、逆に踏み込みすぎるかのどちらかになります。

成果を示す場合の根拠。 どの事例の、どういう条件下での結果か。この対応を持っていないと、あとから根拠を求められたときに示せません。

業種によっては、薬機法や金融商品取引法も関わります。判断に迷う表現は、公開前に確認するほうが、公開後の取り下げより負担が小さくなります。

総括 文章の前に、渡す情報を決める

ここまでを整理します。

コピーライティングとは、読み手に特定の行動を取ってもらうために書く技術です。評価されるのは表現の巧拙ではなく、読んだ人が動いたかどうかです。

ただし、文章が効くのは、その手前までの工程が機能している場合に限られます。 判断材料を持っていない人には、文面の質が届く余地がありません。販売ページを改善する前に、そのページに誰がどういう状態で来ているのかを確認するほうが、結果につながる場合があります。

外に任せられるのは「どう書くか」までで、「誰に向けて」「何を伝えるか」は社内に残ります。 ここが決まっていない状態で発注すると、方向の定まらない原稿が納品されます。これは受注側の力量ではなく、渡す情報が足りていないことによるものです。

発注前に決めるのは4つです。読み手の状態、読んだあとにしてほしいこと、約束できる範囲、良し悪しの判断基準。この4点は、外注しない場合でも必要で、社内で書く場合も書き手が別の人であれば同じ情報が要ります。

納品後の判断は、事実 → 約束の範囲 → 読み手との適合 → 行き先の数 → 表現、の順で見ます。順序が逆になると、表現を直したあとに前提のずれが見つかり、作業がやり直しになります。

発注を検討している場合

この記事は、発注側が決めておくことまでを扱いました。4点を社内で書き出せるかどうかが、外注の成否を分けます。

書き出せない場合、原稿の発注より先に、自社の導線と読み手の状態を整理したほうが結果的に費用は抑えられます。支援の範囲・進め方・費用の考え方をまとめた資料をお送りしていますので、判断材料としてご覧ください。

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