DRMとは何か 集客・教育・販売を一本の線にする考え方
DRMとは反応を促し、反応した人だけを対象に販売まで組み立てる考え方です。集客・教育・販売の3工程がなぜ切れるのか、自社の導線が切れている箇所を見つける4つの問い、どこから手をつけるかの順序までを法人の実務目線で整理します。
DRM(ダイレクト・レスポンス・マーケティング)とは、情報を受け取った人に「反応」を促し、反応した人だけを対象に販売までを組み立てるマーケティングの考え方です。 集客・教育・販売という3つの工程を、一本の線としてつなぐ設計を指します。
特定のツールや手法を指す言葉ではありません。ここが誤解されやすい点で、DRMは「何を使うか」ではなく「どの順番で渡すか」の話です。
広告もSNSも動いているのに売上が伸びない事業では、施策そのものの質より、施策と施策のあいだが切れていることが原因になっている場合があります。この記事では、用語の意味から始めて、自社の導線のどこが切れているかを見つけるところまでを整理します。
DRMとは、反応を前提に組み立てるマーケティングのこと
DRM(ダイレクト・レスポンス・マーケティング)とは、情報を受け取った人に「返信」や「反応」を促すことを前提に組み立てるマーケティングの考え方です。
新聞や雑誌の広告欄、電車の中吊り、テレビCM、屋外看板といった広告の多くは、読み手に何らかのイメージを残すことを目的に作られています。企業名の認知を広げる、製品の印象を良くする、といった目的です。これらは一般に「イメージ広告」と呼ばれます。
これに対してDRMでは、広告に触れた人がその場で何らかの行動を起こすことを目的に置きます。資料を請求する、問い合わせフォームに入力する、メールアドレスを登録する。何でもよいわけではなく、次の工程につながる行動を設計して置きます。
この違いは、広告の見た目ではなく測り方に表れます。イメージ広告は「どれだけの人に届いたか」で評価されます。DRMは「どれだけの人が動いたか」で評価されます。同じ予算を使っても、評価軸が違えば作るものも変わります。
DRMが「反応した人」だけを追いかける理由
DRMがこの形を取るのは、反応した人と見ただけの人では、その後の行動が大きく違うためです。
資料を請求した、メールアドレスを登録した、無料相談に申し込んだ。こうした行動を取った人は、その時点で「自分にとって関係のある話だ」と判断しています。一方、広告を目にしただけの人は、まだその判断をしていません。この差は、その後の購入率にそのまま表れます。
だからDRMでは、反応した人を名簿として持ち、その人たちに対して継続的に情報を届けます。最初は購入の見込みが薄かった人でも、判断に必要な材料が揃えば購入に至ることがあります。信頼関係を築く工程と、商品の必要性を伝える工程を挟むのは、このためです。
DRMを構成する3つの工程 集客・教育・販売
DRMは、大きく3つの工程で成り立っています。
集客は、まだ接点のない人と接点をつくる工程です。広告、検索、SNS、紹介。手段は何でも構いませんが、ここでの目的は「売ること」ではなく「反応してもらうこと」です。
教育は、接点を持った人に判断材料を渡す工程です。何のための商品か、誰に向いていて誰に向いていないか、導入すると何が変わるか。この工程が薄いと、後の販売工程で「まだよく分からない」という理由の見送りが増えます。
販売は、判断してもらう場をつくる工程です。提案、見積もり、申し込み。ここで初めて購入を促します。
この3つは、どれか一つが優れていればよいというものではありません。3つが順番につながって、初めて一本の線になります。
3つの工程が揃っていても売上につながらない理由
実務でよく見るのは、3つの工程が「ある」のに売上につながっていない状態です。広告は出している。メールも送っている。提案資料もある。それでも数字が動かない。
このとき起きているのは、工程はあるが、工程と工程のあいだで何も渡されていないという状態です。
広告で来た人が、その広告で何に興味を持ったのか分からないまま、全員に同じメールが届く。メールを読んだ人が、次に何をすればよいのか書かれていない。提案の場に来た人が、まだ何も判断材料を持っていない。一つひとつの施策は動いていても、線としてつながっていなければ、投じた費用は最後まで運ばれません。
私たちは、DRMを手法の名前としてではなく、この受け渡しをどう設計するかという順序の話として捉えています。ツールを入れ替えても、工程を増やしても、あいだが切れたままなら結果は変わりません。
自社の導線が切れている箇所を見つける4つの問い
自社の状態を確かめるとき、次の4つに答えられるかどうかが目安になります。数字を集める前に、まずこの問いに言葉で答えられるかを見てください。
- 広告や検索から来た人が、最初に取る行動は何か。それは決めてあるか
- 反応した人の情報は、どこに、どういう形で残っているか
- 反応してから購入までのあいだに、何を、どの順番で伝えているか
- 購入しなかった人には、その後どう接しているか
答えに詰まる箇所が、切れている箇所です。多くの場合、切れているのは3つめです。集客の手段と販売の場は用意されているのに、そのあいだで何を伝えるかが決まっていない。
それぞれの問いで、何を見ているのかを補足します。
1つめは、入口の設計です。 「まずは資料請求」「まずは問い合わせ」と決まっていれば、広告もページもその一点に向けて作れます。決まっていない場合、ページには複数の行き先が並び、読み手はどれを選べばよいか分からないまま離れます。行き先が多いことは、親切ではなく判断の放棄です。
2つめは、資産として残っているかです。 反応があっても、その情報が担当者の受信箱にしか残っていない、あるいはフォームの通知メールだけで蓄積されていない事業は珍しくありません。この状態では、一度接点を持った人にもう一度届けることができません。集客のたびに、ゼロから集め直すことになります。
3つめは、順序の設計です。 何を伝えるかだけでなく、どの順番で伝えるかを決めているかを見ます。商品の説明を最初に置くと、まだ必要性を感じていない人には届きません。「どういう状態の人に必要な話か」を先に置くほうが、読み手は自分ごととして受け取れます。
4つめは、見送った人の扱いです。 検討したうえで今回は見送った人は、必要性を理解している点で、まだ何も知らない人より近い位置にいます。その人たちへの接し方を決めていないと、最も近い見込み客を毎回手放していることになります。
自社だけで見ると、この切れ目は見えにくくなります。日々運用している人ほど「そこはやっているつもり」になるためです。第三者の目で一度整理したい場合は、マーケ構造診断で現状の導線を一枚の図にしてお渡ししています。
参考モデルケース:工程を足すのではなく、あいだを埋めた例
守秘義務に配慮し、業種および一部の詳細を変更した参考モデルケースとして記載しています。
オンラインで講座を提供している事業者から、「広告費を増やしても申し込みが増えない」というご相談を受けたことがあります。
広告は運用されていました。申し込みフォームもありました。メールも配信されていました。工程としては3つとも揃っています。
見ていくと、切れていたのは教育の工程でした。配信されていたメールは、新しい講座の案内と開講日の告知が中心で、受講を判断するための材料がほとんど含まれていませんでした。誰に向いた講座なのか、受講後に何ができるようになるのか、他の選択肢と何が違うのか。読み手が判断に使える情報が入っていなかったのです。
このとき私たちが提案したのは、広告費を増やすことでも、新しいツールを導入することでもありませんでした。配信するメールの中身を、告知から判断材料に組み替えることです。順番も、講座の説明より先に「どういう状態の人が受けるべきか」を置きました。
結果として、広告の予算は変えないまま、申し込みの件数が改善しました。増やしたのではなく、渡していなかったものを渡しただけです。
なお、これは同じ手順が他の事業でも効くという意味ではありません。切れている箇所は事業ごとに違います。この例で言いたいのは、工程を足す前に、いまある工程のあいだを見るほうが早い場合があるということです。
「DRMは古い」という見方について
DRMという言葉自体は新しいものではなく、通信販売の時代から使われてきた考え方です。そのため「もう古い手法だ」という見方をされることがあります。
手法として捉えるなら、その指摘は一理あります。当時使われていた具体的な手段、たとえば紙のダイレクトメールや電話でのフォローは、いまの主流ではありません。
ただ、反応した人とそうでない人を分けて扱い、判断材料を順番に渡してから購入を促すという考え方の部分は、媒体が変わっても機能しています。メールがLINEに変わっても、動画が加わっても、順序そのものが不要になるわけではありません。
道具の話と順序の話を分けて考えると、何が古くなり、何が残るかが見分けやすくなります。
DRMを整えるとき、どこから手をつけるか
最後に、手をつける順序について整理します。
3つの工程のうち、最初に見るのは教育の工程です。ここが薄いまま集客を強化すると、増えた人がそのまま抜けていきます。広告費を上げる前に、いま接点を持っている人に何を渡しているかを確認したほうが、投じた費用は残ります。
次に販売の工程です。判断材料を渡したあとに、決める場が用意されているか。問い合わせフォームがあるだけで、そこに至る誘導がない状態は珍しくありません。
集客の強化は、そのあとです。順序を逆にすると、集めた人が抜けていく状態のまま費用だけが増えます。
この順序を勧める理由は、手戻りの大きさが工程ごとに違うためです。教育の工程で何を伝えるかが決まると、販売の場で用意する資料も、集客で使う訴求も、そこから逆算して決められます。逆に集客から手をつけると、教育の中身が決まった時点で、作った広告もページも作り直しになります。
ただし、例外もあります。すでに十分な数の見込み客を抱えていて、そこからの成約だけが課題という場合は、販売の工程から見たほうが早く効きます。順序は原則であって、現状によって入口は変わります。
とはいえ、どの工程が薄いかを自社で判断するのは簡単ではありません。設計から実行の判断まで並走する形をご希望の場合は、戦略コンサルティング+月次伴走でお手伝いしています。
イメージ広告とDRMは、どちらかを選ぶものではない
対比で説明したため、二者択一に見えたかもしれません。実務では併用されます。
名前を知られていない事業では、そもそも反応が起きません。 誰の案内なのか分からないものに連絡先を渡す人は多くないためです。この場合、認知を広げる施策が先に要ります。
逆に、認知だけを広げても、受け皿がなければ通り過ぎられます。 覚えてもらった時点で反応を受け取る先がなければ、次に思い出してもらえるかは運になります。
判断の目安は、いま足りないのが「知られていないこと」なのか「知られているのに動かれないこと」なのかです。問い合わせがゼロに近いなら前者、サイトに人は来ているのに反応がないなら後者を疑います。
名簿を持つことに伴う責任
DRMは連絡先を預かることを前提にした考え方なので、個人情報の取り扱いが必ず発生します。
利用目的をあらかじめ示すこと、本人の同意を得ること、安全に保管すること、削除の求めに応じること。これらは事業の規模にかかわらず求められます(参照:個人情報保護委員会)。
実務で問題になりやすいのは、始めたあとに整えようとする場合です。すでに集めた連絡先について、どの目的で同意を得たのかを遡って確認できないと、その名簿を使えなくなることがあります。取得の入口を作る前に、誰がどう管理するかを決めておくほうが安全です。
総括 DRMは順序の話であり、道具の話ではない
ここまでを整理します。
DRMとは、反応を促し、反応した人だけを対象に販売まで組み立てる考え方です。集客・教育・販売という3つの工程からなりますが、成果を分けるのは各工程の出来ではなく、工程と工程のあいだで何が渡されているかです。
自社の状態を確かめるには、4つの問いに言葉で答えられるかを見ます。入口が決まっているか、反応が資産として残っているか、購入までに何をどの順番で伝えているか、見送った人にどう接しているか。詰まった箇所が、切れている箇所です。
手をつける順序は、原則として教育 → 販売 → 集客です。手戻りの大きさが工程ごとに違うためで、教育の中身が決まると、販売の場も集客の訴求もそこから逆算できます。ただし、見込み客をすでに十分抱えている場合は販売から見たほうが早く、順序は現状によって入れ替わります。
道具の選定は最後です。 メールかLINEか、どのツールかという判断は、何をどの順番で渡すかが決まって初めて意味を持ちます。
この記事で扱わなかったこと
具体的な実装の手順、たとえばメール配信の設定方法やフォームの作り方には触れていません。これらは使うツールによって手順が変わるうえ、何を伝えるかが決まっていない状態で先に手順を決めても、作り直しになるためです。まず順序を決めてから、道具を選ぶことをおすすめします。
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現状を整理したい場合
この記事は考え方の整理までを扱いました。自社のどこが切れているかは、外から一度見たほうが早く分かります。 日々運用している人ほど「そこはやっているつもり」になるためです。
支援の範囲・進め方・費用の考え方をまとめた資料をお送りしています。検討段階でも構いません。